藤枝に到着し、向かったのは「杉井酒造」です。「杉錦」という日本酒でお馴染みの酒蔵です。こちらで酒蔵見学をさせて頂きました。何度となく日本酒の酒蔵は見学させて頂いおり、その工程を目にする機会もあったのですが、今回は初体験もありました。それが、速醸酛と生酛の試飲です。その違いも含めて、興味深いお話、静岡ならではの日本酒の成り立ちのお話を聞くことができました!
杉井酒造のメインブランドは「杉錦」です。
試飲する、はずが時間がなくなってしまったので、夜に持ち越しです。近年は生酛や山廃にこだわって日本酒作りをされているそうですが、速醸酛を使った大吟醸も飲み比べのために用意されておりました。
静岡県の日本酒蔵リストも頂きました。静岡県だけで、27カ所もの場所で日本酒作りがされているそうですが、これはかなり多いと思います。その中でも藤枝には4蔵があります。
静岡の日本酒と聞いてもピンと来なかったのですが、リストを見ると「臥龍梅」や「磯自慢」など、確かに聞いたり呑んだりしたことのある日本酒もありました。
社長兼杜氏から伺ったのは次のようなお話です。
・藤枝に酒蔵は4つ
・静岡県には酒を作っているのが27箇所
・1年間に1万本売ると100石
・数百石から千石くらいの規模の酒蔵が多い
・半径20-30kmのお客さんを相手に商売していた
・規制緩和で安い酒が入ってきた
・静岡は吟醸作りに特化し、価格競争に巻き込まれずに生き残った
・このあたりは水も豊かで穀倉地帯でもある
・吟醸作りが始まったのは昭和の初期
・お米を磨いてでんぷんの純度を高めた
・削ったほうがキレイなお酒になる
・吟醸酒が商品として本格的に出てきたのはここ30年くらい
・それまでは高いお酒は飲まれないだろうと一級酒、特級酒に混ぜていた
・吟醸酒を作るのは難しい、機械化しにくい
・杉錦では生酛、山廃で作っている、静岡では珍しい
・静岡も10社は杜氏が来ない、杉井酒造も社長が杜氏を兼ねている
・日本酒作りのスタイルが変わりつつある
・昔はこんなに磨かなかった
・最近は磨かないお酒もリバイバルしている、すっぱい
・ずっと吟醸酒を作ってきたので、マーケットが他のものを欲するようになってきた
・口当たりがいいだけだと面白くない、お米を磨かない酒が出てきた
・例えば竹鶴、新政、五人娘
・マーケットが熟成してきた
・ワインは日本酒と比較して酸っぱいし渋い、あれが食事にあう、ワインを飲むのに日本人は80年かかった
・吟醸酒は官能的に心地よい要素だけでできている
・料理には香り一辺倒の吟醸酒よりもお米を磨かない酒の方が合う
・生酛、山廃では吟醸酒の鑑評会では良い評価を得られない、自然に乳酸菌を生やすとそういう癖がつきやすい、速醸酛として乳酸菌を入れてしまったほうがすっきりする
・静岡型生酛、静岡型山廃と自分たちでは呼んでいる
とてもお話の美味い方で、なんとなくしか分かっていなかった速醸酛、生酛、山廃のことなどがよく分かりました。
香りの高いものばかりだと飽きられて、個性のあるものが求められていくというのは、入口がハイボールで、徐々にロックやストレートなどチガウも飲み方を求め、さらにはクセのあるスモーキーなものが飲みたくなるのと似ているな、と思いました。
さて、蔵の見学ですが、酒母室ともろみ発酵室を見学させて頂きました。
米を蒸すところ。
50%精米した米。
酒母室。
酛が作られています。速醸酛と生酛を比べさせて貰いましたが、速醸酛は香りが高く、生酛は濃厚でした。味わいはヨーグルトのようです。酸っぱいことで雑菌が繁殖しないそうな。
酛からしてこれだけ味わいや香りが違うのだから、製品になったら違うものができるよなぁ、と実感することができました。酛の違いって、こんなに大きいんですねぇ。
生酛。
味わいは濃厚。このままでも、結構いけます。米のヨーグルト的な味がしました。 食べたことはありませんが。
もろみ発酵室。
こちらもプツプツと。
これまで知らなかった静岡の地酒のことだけでなく、生酛、速醸酛の味見をさせて頂いたお陰で、その違い、意味も身体に刻み込むことができた気がします!