ゆういちは言った。
「ワシ、仕事を辞めるんや」
「えっ!?」
「どうしたんや、急に!?」
「ワシ、みんなの足手まといに感じるんやな。そうなったら、老兵は去るのみ、ちゃう?」
「うーん。それでもオッジを必要としている人はいるんちゃう?」
「まあまあ。そうやってワシを必要としてくれている人がいるうちに、スッと去りたいんやな。送別会とかもしてほしくないんやな。それこそ、老兵はただ去るのみ、や(笑)」
「まあ気持ちは分からなくもないけどな。惜しまれるうちに引退。おいおい、プロのスポーツ選手みたいちゃうか?」
「はっはー。ワシはいつのまにプロスポーツ選手になってんたんや。どこで道をまちごうたんかなー」
「歩んだ道に正解も間違いもないやろ。オッジの歩んだ道、それは全て正解や。それでええんちゃう?」
「(ひっくひっく)」
「どどどど!どうしたんや!」
「マサトが‥‥そんな風に思ってくれてたなんて‥‥」
「なんやなんや」
「ワシ、嬉しいんやな(号泣)」
「まあ飲めや」
「なにをや」
「ストロングや」
「ああ、ストロングか」
「オッジのストロングな人生に乾杯や」
「ははあ」
「58歳。よくここまで頑張ってきたな」
「ははあ」
「お疲れさま、オッジ」
ストロングゼロを、プラカップに注ぎ、カツンとも言わない鈍い音で交錯するカップで乾杯する2人。
続きは、次の人生で。